ダイオキシンの測定差について(2001-02-23)
ダイオキシンの測定差に関するメールを頂きましたので、本人に了解の上その内容を公開致します。
前略。初めてお便り致します。私は、会社で10年以上、化学分析に関わっている
者です。その立場から、ダイオキシンの測定差(測定機関の違いによるあまりにも
異なるダイオキシン値)について、説明させて頂きます。
ニュースを見る度に思うのですが、必ずと言っていい程、大学の先生が出した値
と国(あるいは県)が出したダイオキシンの値には差があります。大学の先生の方
が高値で、国の方は低値です。一番酷かったのは、野瀬町の作業員の方の血液中の
ダイオキシン値です。大学の先生は、400pgと出し、国は10pgと出しまし
た。その40倍以上の開きにビックリすると共に、これが単なる分析誤差で無いと
すぐに直感しました。正しいのは、大学の先生が出された高値の方で、低値の方は
、国による意図されたものであると思いました。
最初に説明させて頂きたいのは、低値と高値が出た場合に、どちらを信用すべき
か、です。これは、間違い無く、高値の方が真値です。何故なら、一般環境中(実
験室や試料を運搬した経路)のダイオキシン値は、非常に低く、試料が環境中から
汚染される可能性が皆無に近いからです。更に、微量のダイオキシンは、非常に失
われやすく、従って、高値のデータの方が圧倒的に信頼できるのです。
次に、”何故、低値が出たのか?”という疑問に対する解答です。試料のサンプ
リング(試料を採取する過程)方法が非常に大きな影響を及ぼすのです。例えば
、ある河の水をポリタンクやペットボトルで採取したとしましょう。すると、非常
に僅かしか溶けていないダイオキシン(ピコグラムのレベル)のほとんどは、ポリ
タンクやペットボトルのプラスチック部分に吸着(くっつく)してしまいます。こ
れを研究所に持ちかえって分析した所で、低値のダイオキシン値しか出ないのです
。
能勢町の作業員の方の血液中のダイオキシン値に話を戻しましょう。血液をサン
プリングする場合によく使われるのがプラスチックのチューブです。これを用いる
と、少なくとも血清中のダイオキシンのほとんどは、容器のプラスチックに吸着さ
れてしまい、低値しか出ません。一方、大学の先生は私と同じく、まじめな専門家
ですので、血液をガラス容器でサンプリングしたものと思われ、高値が出たのです
。勿論、正しい値は高値の方です。
ここで、私が疑念に思う事は、国や県が検査する場合でも、”担当者はその事を
知っている筈だ”という事です。これは、超微量のダイオキシンを分析する上での
常識です。即ち、国や県の担当者は、”始めから低値を出そうとして”、”わざと
プラスチック容器を使用した”と考えられるのです。非常な怒りを覚えます。また
、仮に国や県の分析担当者が無知で行った行為としても許せません。仮にそうだっ
たとしても、あまりに無知・不勉強で、国民の命を預かる人間として不適当極まり
ないという事です。
以上の様な事から、低値・高値が出た場合には、高値の方を信用する事が第1原
則と言えます。ご参考になりましたら、幸いです。また、分析に関する疑問がござ
いましたら、お寄せ下さい。
以上