みらいの風ネットワーク
 佐藤  篤子 mirainokaze@geocities.co.jp TEL042−994−0822

生活者の視点から「環境・人権」問題をテーマに活動している市民グループです。
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様々な問題点が浮き彫り
野菜のダイオキシン報道
ダイオキシンも怖いが、農家の意欲が失せる方がもっと怖い
配慮に欠けた報道も問題
産業構造を変えない限り汚染は終わらない
 所沢JAが隠し続けていた野菜のダイオキシン数値発表で一応の収束は見たものの「何だかすっきりしない」と思っているのは私だけではないだろう。 それは、これによってダイオキシン汚染が止まったわけではなく煙は相変わらず出続けていること、土屋知事は「産廃業者に操業の自粛を呼びかける」と会見で発言していたが、本当にそれで業者は操業を止めるとは思えない。 2年半前知事は「元、環境庁長官だからダイオキシン問題は必ずやる」と言っていたが何も事態は変わっていない。 JA所沢が公表した数値は水洗いした野菜で2年前の数値。現在はどうなのだろう。これからはどうなのだろうか。所沢は突出して多くの焼却炉があるが、焼却炉のあるところダイオキシン汚染は付録のように付いてくる。しかし所沢の野菜だけがターゲットになってしまった。
 報道で今まで動かなかった行政が大慌てで対策を打ち出したり、中川農水大臣の「所沢のほうれん草を食べる。自衛隊にほうれん草を」小渕首相が所沢のほうれん草を食べたりなどの一連の言動は醜態というか、マンガチックでもあった。いずれにしてもあの報道で様々な問題が浮き彫りとなった。
 また、農家は一時は壊滅的な状況となった。報道時は営々と300年も続いてきた農家の集落そのものの存続も危ぶまれていたほどである。また、現在は落ち着いているものの農家の人は「焼却炉から煙が出ている限り安心は出来ない」と話しているし、消費者としても安全宣言には同調できない。
 ニュースステーションで報道された3.8pgと言う高い数値はお茶であろうことは、地元十も印の多くは予測していた。報道直後から所沢一帯のお茶業界は一時的にパニック状態だったと聞く。しかし、県はお茶の数値も大丈夫と安全宣言をした。お茶はお湯に溶けないため、直接食べなければリスクは少ないらしい。お茶として飲むことではリスクが少なくても、3.8pgと言う高い数値がでたことが問題なのだ。それだけの汚染源があると言うことを問題にしなければならないのに・・・。
 お茶にしろ野菜にしろ汚染源はダイオキシンの排出業者であるとともに、その業者に廃材や廃棄物処理を委託している大手ハウスメーカーをはじめとする企業であり、「塩ビ以外の物を燃やしてもダイオキシンは出る」として塩ビを作り続けている塩ビ業界の責任でもある。
  そして、それらを野放しにし対応していない行政、それをチェックできない政治家等々で、農家の責任ではない。メーカーや流通機関も遅蒔きながら部品や包装・容器などのリサイクルをはじめたが、作った者が最後までその責任を負う製造業者責任を法的に位置づけてこれに違反すれば、罰せられるという法整備をする必要がある。安全性などを考えないで作りたいだけ作って後始末は産廃業者にでは、いつまでたってもダイオキシンを含む有害物質による汚染は解決しない。そして、県は立地規制や流入規制などに罰則規定を設けてチェックする。市は立入検査やパトロールを強化するなどはもちろんのこと、やはり罰則規定のある条例をつくるべきだ。消費者は企業のチェックをしたり、ゴミになるものは買わない、企業に意見を言う、ゴミの分別をするなど「ゴミをつくらない、燃やさない、資源の徹底有効利用」という方向に構造を変えていかなければ根本的な問題は解決しない。

所沢の問題だけではない
報道機関はどうあるべきか考えてほしい
 所沢周辺には産廃施設が集中しているが、焼却施設のあるところは野菜だけではなく、魚も動物も人間もダイオキシンに汚染されている、と考えた方が妥当である。2月1日のニュースステーションの報道は、「所沢の野菜は食べない方がいい」だけにとどまり、生産者の苦悩は全くおきざりにされ、汚染源は焼却施設であり、国をはじめ行政の無策が招いた悲劇であることも報道されなかった。(後日取り繕うようにそれに触れてはいたが)また、さも所沢の野菜だけが汚染されているかのようにも映った。
生活の糧を農産物でえて、しかもそれを食している農家。相続などでやむなくまたは知らないで売った土地が焼却施設になり、それによって自作の野菜や地元住民にまでも被害が及ぼうとは予測できなかっただろう。それらを含めた農家の人たちの苦悩、意見の違う農家との摩擦の中運動をしてきた人たちの苦悩はいかばかりかと思うと、胸が痛む。
 ダイオキシンも怖いが、生産者の人たちが今回のことで「作る意欲を失い、農業を止めてしまう」ことの方がもっと怖い。ここ数年で所沢の工作面積は著しく減少している。脱サラをして農業を選んだ友人が選んだ地でも、同じような傾向が見られるという。食の自給率が30%といわれている日本だが、国際関係が悪化して食料の輸入が途絶えれば、戦後の食料難どころではない。
また、次期市長選に立候補を決めている議員が放映されていたが、マスコミをうまく使って自己PRをすることで有名な議員である。しかも議員は彼一人しか映っていないし、それほどダイオキシン問題に一生懸命になっているとは思えない人でもある。彼にとって格好に選挙広報になったことだろう。  ニュースステーションの担当者のT氏は、「絵にならないと報道しない。もっと運動が盛り上がらないと東部クリーンセンターのことは報道できない」と話した。これは他局のテレビ報道者とも同じ考え方だとは思うがガッカリした。これでは業で亥と一緒ではないか。「ばたばた人が死なないと動かないのか」と行政に対して憤りをぶつけているが、同じ発想だと思う。
  報道者は、小さな問題でも、地味な出来事でも、それが重要な問題をはらんでいたなら、問題解決のために住民とともに世論を形成していくのが使命ではないのか。おもしろおかしく報道して視聴率を上げればいいのか。なんのために報道するのか、報道者としてのプライドを持ってほしい。これはマスコミ全般に訴えたいことでもある。そして、視聴者である私たちも「テレビってこんなものさ」とあきらめないで、ひどい報道に対してはチェックを入れて行くべきだと思う。

消費者として
 あまり配慮のないテレビ朝日の報道に憤りは感じたものの「所沢の野菜は買わない」だけで、生産者や焼却炉の問題に言及していなかった消費者に対してもやりきれなさを感じた。個人的には買う買わないには全く左右はされなかったが、ダイオキシン汚染のことがわかって以来正直言ってずっと迷っていた。農薬や遺伝子組み替え食品、添加物を避けた食材を選んできた。そして、地元の有機野菜や無農薬茶も好んで食していた。だが、ダイオキシン汚染のことを考えると子供には食べさせたくないと正直思う。しかし、汚染は所沢だけではないし、農家の立場を考えると率先して食べようとも思う。現在は、この地に住み痛みを分かち合う意味でも子供を作らない大人が食べればいいと個人的には思っている。また、これを逆手にとって「所沢の野菜をどんどん食べようよ、食べたくないなら、汚染源を止めるために一緒に運動をしようよ!」と運動の活力に転換しようと思っている。
 農業をしている知人は、「ダイオキシン問題が浮上する前は、これからの自分の農業に「こうしよう、ああしよう」と夢をもち展望もあった。でもすべてがこわれてしまったと話している。このことが残念でならないし、作ってくれる人がいなくなることが一番怖い。早く夢が復帰するようみんなで汚染源を断つよう運動していきましょう。

人間関係がこわれることも怖い
 マスコミ報道や選挙・政治がらみなどの影響で市民運動にヒビが入ることが少なくない。様々な情報が交錯し、ともすると本来の目的を見失い、中間同志・知人親戚関係の信頼関係がくずれることがある。
 汚染源は焼却施設であり、対応を怠った行政に責任があるにもかかわらず、報道機関に誰が野菜を提供したのかJA関係者は翻弄されたと聞く。また、取材に応じた住民にも非難が及んだとも聞く。あちこちに情報が飛び交い住民運動をしている人々の間でも混乱があった。それらに翻弄されることは愚かなことだが、人間の弱さが露呈することがある。これを修復することは容易ではない。心ない報道で人間関係がこわれることが最も怖いことかも知れない。少し意見は違っても同じ運動をしている仲間同志、意志のある者がその意志を捨てず連携し運動していくことが大事だ。本来の目的を見失わずに。

自然回復にこそ経済投資を
 大量生産・大量消費・大量輸送・大量廃棄、そして効率主義で突っ走ってきた日本。
一時的には経済効果や物理的な繁栄をもたらした。しかし、それによって自然も人も動物も植物もすっかり病んでしまって、回復させるには莫大な費用がかかるし容易ではない。経済や物質的な繁栄だけでは人は幸せにはなれないことをここに来て我々は学んだのではないか。
常に経済、景気回復が政策の最重要課題とされるが、今まで破壊した自然回復に民間活力を導入し、公共投資をすれば経済も自然も復興するのではないか。「大量生産・・・大量廃棄」の構造が大量の焼却施設を生みダイオキシンを発生させている。ごみ焼却にも莫大なお金が費やされ、その維持管理も容易でない上に莫大な費用を投じている。焼却施設を始め維持管理費に莫大な費用がかかるムダな箱物行政は止めて、今まで破壊してきた自然の復興や資源を最大活用するリサイクルシステム、また、環境破壊で病んだ人間をふくむ生物のケアなどに経済投資をしてほしいと思う。





ダイオキシン土壌調査に異議あり!
 昨年12月から1月にかけて所沢市が行ったダイオキシン類の大気、土壌、水質調査の中の土壌調査の中の一つに立ち会った。
1月21日、12ある土壌調査対象地域の中の航空記念公園西新井の交差天地各区の測定曲近くに向かった。特のも、その前日土壌調査に立ち会った人から「深さ5センチの土壌を検査分とするのに、6センチだったから抗議した。市民がいないといい加減なことをする。是非検査に立ち会って欲しい」との連絡が入ったから。土壌調査を担当した業者は日本食品分析センターで、市の職員も同行していた。
立ち会ってビックリ。
最初はうまく採取できたが、2カ所目から業者がステンレスの筒場の採取器具を土に差し込んだら下は砂利。
 「ここはダメだ」次に場所をずらしたが、そこも砂利でダメ。
 「エッ!事前に適切な場所かどうか下調べをしていないの?」
 結局、採取したのは、こんもりと常緑樹が生い茂る木の下。年中葉が生い茂っている下では、葉がダイオキシンを防ぐフィルターになってしまって土壌にはあまり落ちてこない。またダイオキシンは土の表面の表層にたまるわけだから、筒状(深さ5センチ分)にとってはダメ。ダイオキシン類の第一人者である宮田教授が行った土壌調査に立ち会ったことがあるが、その時は表層2センチ位を四方形に採取していた。筒状だとダイオキシン濃度は当然薄まってしまう。
 こんないいかげんな調査で「安全宣言」をされてはかなわない。それに税金のムダ。こんな事をやっていると、いつまたデータねつ造といわれても仕方がない。意図的にやっていることなの?       (未来の風ネットワーク通信 NO.7 98.2.20より)





何のための母乳調査なのか  またもウソ  平均値でごまかすな
  母乳からダイオキシン。
  この事実は授乳している母親ならずも、多くの人々に脅威と不安を与えている。ダイオキシンは微量でも生殖器の異常や癌の原因物質になるといわれ、人類存亡にかかわる「環境ホルモン」でもあり、健康への悪影響ははかりしれない。
 県は昨年10月から今年1月にかけて、初産から一ヶ月前後で、その地域に5年以上住んでいる25歳から34歳の女性(県西部40人、
南部・北部・東部各20人)100人を対象にコプラナーPCBを除いた母乳中のダイオキシン調査を実施した。だが、4割がその地域居住5年未満だったことが発覚。しかも発覚以前に「汚染の地域差はない」とコメントしていた。
 西武清掃工場のデータ隠し、ねつ造に続いて「これもウソー・・・」。これでは今までの調査やこれからの調査に対しても私たち県民は「信用できない」と判断せざるをえない。
 また、76pg(安全指針値の35倍)の濃度が検出された女性が県西部にいたことが問題であって、平均値で薄めて「影響はない」と判断すべきではない。日本の安全指針値の数値設定は高い。しかも薄めた平均値15pg(一日の母乳量に換算すると72pg摂取/国の安全指針値は10pg)で見ても指針値の7倍にもなっている。(乳児体重1kg当たり一日に120ccの授乳で換算)
 偽りの情報にくわえて、平均値で数値を薄めて「大したことはない」との安全宣言のための調査にすり替えている。県民の健康と安全を守るための調査ではないことがあらわになった。
 ダイオキシン類は体内の脂肪に蓄積することから、人体への影響を調べるための母乳調査、そして、一番影響を受ける乳児への影響も考慮しての調査だと思っていたが・・・。
 何のための調査なのか。県民の不信感を払拭するためにも誠実な調査とそれによって出た生データを公表(プライバシーを尊重しつつ)し、
周辺焼却施設との関連、食事の指導など汚染原因を除去するよう、対策を講じるべきである。いますぐ。  (通信 NO.8 98.4.25より)
                                                              



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