告発状
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告発人
所沢市下安松九三九−一八 複合同汚染被害者の会  中村勢津子
所択市中新井五−一−五−五〇一  同       角田 忠昭
東京都文京区千駄木三−二九−一〇 同       中村 忠博
被告発人
所沢市並木一−一−一 所沢市役所 所沢市長 斎藤博
罪状
適用法律  人の健康に係る公害犯罪に関する法律
適用条文  第二条@工場又は事業所における事業活動に伴って人の健康を害する物質(身体に蓄積した場合に健康を害する
ことになる物質を含む。以下同じ。)を排出し、公衆の生命又は身体に危険を生じさせた者は、三年以下の懲役又は三百万円
以下の罰金に処する。
A前項の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。
罪となるべき事実
一.ダイオキシン類測定値の「データ隠し」と「データ操作」
平成九年九月五日、毎日新聞の報道によって暴露された通り(別添記事コピー参照)、所沢市営西部清掃事業所から排出された
ダイオキシン濃度測定データが、著しく高濃度値であったため、市民からの責任追及を恐れた所沢市長斎藤博は「データ隠し」
を計り、平成四年、五年、六年の測定データを「なかった」ものとし隠蔽した。また、これと関連して平成八年度測定においては
測定値を意図的に低くするため、測定時のみ活性炭噴露装置を取り付けたことが判明した。市の発表資料によれば、平成六年度は、
一年間でダイオキシン排出量が五kgを超えており、これは、日本の年間ダイオキシン排出量に相当し、ベトナム戦争枯葉作戦の
ダイオキシン濃度に匹敵するという、重大なる汚染被曝を告げるものであった。所沢市長は、市営の一般廃棄物焼却場施設である、
所沢市東所沢和田三−三二の東部清掃事業所、ならびに、所沢市林一−三二〇の西部清掃事業所において、人の健康を害する
物質であるダイオキシン類及び有害化学物質を排出し、周辺住民の生命または身体に危険を生じさせたものである。
二、所沢市長斎藤博の危機管理者としての背任行為と健康被害犯罪
所沢市危機管理者として市長は、なによりも、危機事実を真っ先に市民に告げるべき立場であるにもかかわらず、危機隠蔽の
ために意図的「データ隠し」「データ操作」をした事は、市民を裏切った背任行為であった。しかも所沢市長斎藤博は、これに
先立つ平成四年度において所沢市委託事業として「所沢市大気環境動向予測調査」<大気汚染シミュレーション事業>を、
東京都港区高輪三−二三−四−七○七(平成七年一月に品川区東五反田五−一九−二へ移転)株式会社環境総合研究所
(代表取締役青山貞一)に対し調査費七六五万円で委託調調査させており、その結果、重度大気汚染地区では、すでに調査時に
おいて「居住が不適切」と明示された報告書が提出されていた。これに関して斎藤市長は、間い合わせもせず、大気汚染を防止
する対応策をなにもとらず、市民に知らせる事も全くなく放置し、さらに環境を悪化させ重大危機を招く結果となった。
異常な数と多種類の健康被害が出ており、多くの胎児を含む人命が失われているものと推測される。市営清掃事業所の
一般廃棄物焼却場から排出される煙によって、日々健康被害が生み出されている。また重大危機につながるダイオキシン類
及び有害化学物質の人体への蓄積が刻一刻進行している事実は、所沢市長斎藤博の危機管埋者としての背任行為に基づく犯罪
である。
三、ダイオキシン類の複合汚染被曝被害状況
@中村勢津子(四八歳)の場合
平成八年一二月二五日より、生理と思われる出血が始まって、翌年、平成九年一月八日手術を受けるまでの一五日間、通常の
生理とは異なる大量の出血のため貧血状態になりました。結果、子宮内膜増殖症〈別添診断書の通り)と診断されました。
 今年(平成一〇年)になってからも、三月も四月も生理が三週間続いたりしましたが、手術を受けた時よりは、出血の量が
少ないように思い、病院へは行きませんでした。行くと、また、手術になるのではと考えたためで、病院へ行くのを躊躇して
いました。四月一七日健康診断を受けた結果は、貧血、血尿、子宮筋腫とのことで、再検査を五月一五日受けました。再検査の
結果はまだ出ていませんが、不安です。今も、現在住む地域は煙に包まれ、荷物を車庫に取りに行くだけで、喉が痛く、また、
頭も痛くなります。普通の生活をするのが困難な状況です。風向きで、煙が濃く溜っているような時には、ゼン息にもなり、
早朝三時三〇分頃から横になって寝ることができなくなります。大気汚染が、こんなにも自分の体に影響するとは考えて
いませんでしたので、六年前に所沢へ家を買って引っ越してきたことを、大変後悔しています。
 長男の共秀(一一歳)は、所沢に移ってからゼン息になり(別添診断書参照)、一年前の五月一日から東京に疎開させて
おります。夫の博もゼン息が悪化して、同じく東京都文京区千駄木の夫の実家に疎開し、週末にだけ帰るような異常な生活です。
一家難散の生活が一年以上経ち、これ以上変測生活を継続することは、さまざまな弊害が生じているため、きわめて困難です。
夫は、最近アトピーの症状まで出始めてきました。不動産価格が下落しているので、家を売るのは大損失ですが、生命の危険から
身を守るためには、やむを得ないと考え始めております。
A中村博(四八歳)の場合
約二〇年前にカゼをこじらせ気管支ゼン息になり一週間入院し、その後、体調の悪い時には、時々軽い発作があったが、
平成四年夏に所沢に越してきた時は、ほとんど、ゼン息を忘れる程だったところが、引越してしばらくして、再び発作が
頻繁に出るようになり、特に、寝る前寝てからと、夜中や、車で移動している時に出るために、噴霧タイプの気管支拡張剤を
手放せない状態が続いていた。特に昨年(平成九年)二月より発作がひどくなり、東所沢クリニックにて二度の診察を受けた
(別添診断書参照)。通勤で、家より東所沢駅まで徒歩で十二分の間、市営東部清掃工場、および、産業廃棄物焼却場を有する
大空リサイクルや大進の煙の風下を通過するため、度々呼吸が苦しくなりゼン息がおきる状態が続いている。特に夜はほとんど
毎日煙っている状態が続き、家の中に空気清浄機が絶対必要になった。フィルターの汚れを見れば、私たちの肺が、いかに
汚れているかが一目瞭然で、ゼン息が出るのは当たり前だと思われる。行政のいい加減さ、人の命を何とも思わぬ非人道的対応は、
本当に怒りを感じる。被害事実を無視し、汚染発生源の自己責任を省みず、市民の生命と財産を守るべき自治行政責任者の使命を
見失い、重大障害を生じるダイオキンン類の人体蓄積を止めようとしない、所沢市長斎藤博の危機対応不作為行政は、断じて
許すことができないし厳罰を求めたい。
B角日忠昭(七一歳)の場合
平成九年六月三○日の夕刻、貧血失神のため自宅において倒れ、救急車で埼玉西協同病院に運び込まれました。これより先、
五月から六月にかけ僅かニケ月位の間に、それまで五三kgだった体重が、一挙に、九kgも激減して四四kgとなっておりました。
風呂に入るたびに計量する体重が、目に見えて減っているのに気が付いていましたが、まさか、ダイオキシンの為とは、恩いも
寄らぬことでした。平成九年の年頭よりダイオキシン問題市民運動に参加して各種の資料を入手しており、いろいろ調べた結果、
国際文献で発表されている動物実験で、「重症衰弱症候群」(ウェスティング・シンドローム)と名付けられた、ダイオキシン類
被曝による疾病であると判断しました。
 また、これも後で分かったことですが、私の居圧するマンションは、有名となったくぬぎ山産業廃棄物焼却場密集地区からは
約二km地点でしたが、すぐ隣接する六○○b地点にニケ所、産廃処埋場があり、その煙が途中遮蔽物なしに(畑のため)
ストレートにくることが分かりました。つまり、風下真南のマンション五階という、煙をマトモに愛ける率が最も高い最悪条件の
住居だったことを知りました。雑木林に隠れていたため、隣接する産廃焼却場に気がつかなかったのでした。もともとは次男の
住居としていたもので、妻が亡くなったためと、次男の海外勤務等により、六年前から移り住んでいました。隣接焼却場の一つは
所沢市との契約で、公団住宅関係の一般廃棄物焼却を取り扱っていることが分かりました。汚染地域の病院では回復がむつかしい
と考え、以前世話になった東京池上の松井病院に七月三日に入院しました。以来、八ケ月に及ぶ長期療養を強いられる事に
なりました。大気汚染による疾病と判断したのは、肺機能と密接な関係をもつへモグロピンが、入院当初の血液検査で激減
していた事が確認されていたからです。松井病院の診断書病名は「鉄欠乏性貧血、栄養障害」でした。日本の医学会の現状では、
ダイオキシン類や環境ホルモン関係の研究医学資料は、
ゼロに近い状態です。私の資料なども参考にしていただいて、さまざまな対症療法によって回復を計り、やっと、今年三月一〇日
に退院することができました。ダイオキシン汚染被曝の現状は、まったく変わらないのですから、ふたたび発病する危険が
あります。三つの部屋に空気清浄機を配備、焼却場に面した北側の部屋は閉鎖し便用禁止としました。ニケ月余を週ごしましたが、
今のところは、なんとか健康が維持されています。しかし風通しの良い快適だったマンションを、常時締め切ったままで、
空気清浄機三台を二四時間フル稼働させて過ごす不安な毎日の生活は、「超異常」を告げる状態といってよいでしょう。いや、
いつ
までも、こんな状態を強いる所沢自治体行攻こそ「超異常」です。すでに、県環境部の調査によって、国際社会で危険値とされた
ダイオキシンの土壌汚染値が、昨年(平成九年)三月時点で明らかになっている地域なのです。危険値汚染が確認されていながら、
市も県も国も、なんら対応処置を取らず、不作為を決め込んでいるのは、いかなる根拠、いかなる所存か、白黒の決着をつけたい、
と思います。私達だけでありません。危険値を超えている環境の中では当然なように、すでにさまざまな難病,奇病に侵されている
人達が多数おられますし、高濃度汚染地域では重大な身体障害を生まれながらに持った子供達も生まれているのです。緊急災害
対策が必要です。もはや、一刻の猶予も許されない段階です。
四 所沢市営東部清掃工場周辺の東川流域はダイオキシン類重度汚染地区
@「健康調査」アンケートにより判明した健康被害状況
平成一〇年二月から三月にかけ、複合汚染被害者の会では、新聞販売店の協力を得て四万枚のアンケート方式「健康調査および
不安調査」表を、所沢市東部と北部のダイオキシン汚染地域に配布し、自主的な市民の「健康調査」を実施した。
その結果、回収した二○○名分をコンピュータに入力し集計したが、次のことが判明した。なお引き続き現在調査を継続中。
★所沢市営の東部清掃工場周辺の東川流域で重大な身体障害児が四名も生まれている。
★子宮内膜症、肝臓障害、重度ゼン息、重度アトピー等、二七名の被曝被害者を確認した。潜在的な被害者および無自覚な軽度の
被曝被害者は数十倍に達するものと推定される。
★重度被害者を含め大部分の人達は、因果関係の立証がされていないことから、自分自身の疾病の原因が、ダイオキシン類や
有害化学物質によるものとは思いたくないようだ。症状は多岐にわたっており、初期症状は、風邪に似ておりセキ・タンが出る、
鼻血などが出やすい。中期症状は、貧血状態や、頭痛、微熱、疲れやすい等の慢牲症状が続く。
★所沢市は、母子手帳発行及び新生児検診により、胎児と新生児の異変に気づいている筈
であるから、重大な汚染が進行中であることを認め、東部清掃工場周辺東川流域を緊急災害対策地区とし、県と国の協力を得て、
緊急に被害者救済対策に取り組むべきである。
A所沢市教育委員会・平成九年度小中学校「健康調査」に示された健康被害状況
情報公開制度によって、金山信之氏が入手した教育委員会平成九年度小中学校「健康調査」
によれば、小中学校学童数二万五千人の四一.五%がゼン息とアトビーに罹っていることが、判明した。一万人を超える
小中学生が、大気汚染が原因と思われる難病に罹っている。こんな重大な事実が確認されていながら、情報公開法の手続きを
しなければ知ることができず、また、行政としてなんらの対策をとらない、教育委員会ならびに所沢市行政担当者の危機管理
対応は、きびしく問い直さなければならない。最近の数年間に急増した難病のゼン息とアトピーであるのに、その重大性を弁えず、
不作為に見過ごす所沢市の行政感覚は、驚くばかりの異常である。
Bダイオキシン類血液調査結果(平成一〇年四月二八日発表)で判明したこと
★市営東部清掃工場周辺東川流域に血液汚染高濃度の一位から四位までの人が居住していた。
★平均値を故意に乱用し、「汚染の地域差はない」と市は発表したが、個々のデータを地図に落とせば地城差があることが歴然と
現れてくる。市営工場周辺の高濃度汚染地域を隠蔽するために、平均値による手の込んだ「データ隠し」をしている疑いが
濃厚である。
★ダイオキシン専門研究者たちの一致した指摘によると、今回の所沢市が実施した血液調査は、血液分析の数値に疑問があり、
他の国との比較でも低すぎる値に非常に驚いているとのこと。またまた重大な犯罪行為である「データ操作」が行われている
のではないかと、市民を不安に陥れている。前項平均値による「データ隠し」ともども、所沢市長斎藤博の自己保身の犯罪行為は、
次第にその骨格を露わにしてきたものと見ることができる。
★所沢市は当初血液調査は実施する計画でなく、毛髪調査に止める計画であった。市民からの強い要望に基づき実施されたのだが、
高齢者、貧血者、疾病者、等を初めから除外した。
 またエイズ等感染症の事前検査については、血液調査を受ける者の自己負担とし、検査費として一万円を必要とした。今回の
母乳・血液・毛髪調査に当たり、市民団体から事前にダイオキシン専門家の参加を提案したにもかかわらず、行政の判断で
行われた。特に血液調査は、ダイオキシン類の身体蓄積を調べるためであり、免疫力が低下している高齢者や、貧血、疾病者
こそダイオキシン類の被曝を多くうけている可能性が高く、重要な調査対象者といえる。これらの人たちを意図的にはずしたのは、
調査目的を市民のためではなく、市長たち行政担当者の責任逃避と自己保身にすり替えた組織的犯罪行為であり、一検体四〇万円
という調査費用合計は、数千万円に及ぶ税金の浪費ということになる。
五、中村勢津子の血液調査で判明したダイオキシン類汚染と疾病との因果関係
 中村勢津子は、今回の血液調査では貧血であったが、自己責任の条件で強力に要請して血液調査を受けた。その結果は、前述の
通り血液分析方法が問題で絶対値には信憑性はないが、相対値として見る時、中村勢津子のダイオキシン血中汚染濃度は、
三五名中高濃度ワースト三位で、これは中村勢津子の子宮内膜症とダイオキシン類被曝との因果関係を立証するもの、として
見ることができる。中村勢津子の住居は、市営東部清掃事業所周辺の東川流域で、北風風下一km内地点、廃棄物焼却場から
排出される煙による、ダイオキシン類及び有害化学物質汚染の人体被曝蓄積率が、きわめて高いと推定される地区である。
◆添付書類・新聞記事コピー、診断書四通(中村勢津子 博 共秀 角田忠昭)、中村勢津子ダイオキシン類汚染血液検査資料
平成一〇年五月二六日

中村勢津子
角田 忠昭
中村  博

浦和地方検察庁 御中