はじめに

 本日は次の2点について具体的なデータをもとに報告し、一刻も早くこのダイオキシン問題の解決に向けて有効な対策を実行しなけれぱならないことを訴えたいと思います。

(1)所沢周辺のダイオキシン汚染(土壌、大気)は、汚染源である通称“くぬぎ山”の産廃密集地域を中心として、南側に約4km以上に及び、かつて例をみないほどの広域汚染となっている。そのため、産廃の焼却停止を含めた緊急対策が必要である。

(2)秩父地方では、長期間の家庭焼却によって乳幼児の死亡率が異常に高くなっている。家庭焼却によるダイオキシン汚染は、秩父だけではなく全国に共通する深刻な問題であり、家庭での焼却禁止と焼却灰の除去を緊急に実施すべきである。
 摂南大学の宮田秀明教授と私たち「止めよう!ダイオキシン汚染」さいたま実行委員会では、2年以上前から所沢周辺のダイオキシン問題に取り組み、自治体による調査が始まる前から、土壌調査や健康被害調査を進めてきました。その後、私たちの要望を受けた県や各市町による環境調査が始まりましたが、汚染の実態を解明するにはほど遠く、従って対策への手がかりも暗中模索の状態であり、解決への道のりは非常に厳しいものがあります。
 一方、秩父地方をはじめとする家庭焼却によるダイオキシン汚染は、所沢周辺の調査を進める過程で明らかになったことで、全国にも波及する可能性が高いと思われます。しかしその実態については、ほとんど何も分かっていません。特に焼却灰は庭先や農地、川の土手などに撒かれている場合が多く、汚染実態を早急に調べなくてはなりません。
 そして3番目の問題として、本日は指摘だけにとどめますが、大阪府能勢町のような一般廃棄物焼却炉周辺におけるダイオキシン汚染問題があります。これらの公共炉についても排ガス規制がかけられましたが、濃度規制にすぎず、総量規制ではないことに注意する必要があります。そのため、たとえ1立方メートル中に含まれるダイオキシン濃度が低くても排ガス量そのものが多いため、ダイオキシンが周辺に蓄積し、高濃度汚染を引き起こしている可能性が考えられます。早急に周辺の環境調査を行う必要
があると思われます。
 ダイオキシン問題は環境ホルモンの最重要課題として、一躍脚光を浴ぴるようになりましたが、もとをただせばゴミ問題であり、高度経済成長を支えた大量生産・大量消費・大量廃棄社会の負の遺産に他なりません。従って、大量生産・大量廃棄の根幹にくさびを打ち込まない限り、その真の解決は困難です。昨今、経済界をはじめとする各界でかまぴすしく叫ばれている個人消費の落ち込みが、実はゴミ問題、そしてダイオキシン問題、さらには地球温暖化問題への最も根本的で最良の解決策であることを、冒頭で指摘したいと思います。
 もっともっとモノ(=ゴミ)を買わないようにし、ゴミの発生をギリギリまで減らすような創意工夫を実践すること。これが出来るのは私たち生活者(=消費者)をおいて他に有りません。個人消費のわずかな落ち込みが日本経済に与えた大きな影響を、私たち生活者(=消費者)は環境問題の観点から捉え直す必要があります。環境問題解決への主導権を握っているのは、政府でも経済界でも産業界でもなく、じつは生活者(=消費者)である私たち市民です。このような自覚は、私たちが環境問題に対して希望をもって主体的に行動するために、とても大切です。
 私たち一人ひとりが強大な影響力を持つ環境保護運動家であることを自覚し、さらに強力な“買い渋り”の実践によって、モノの生産とエネルギー消費にブレーキをかけ、ゴミを減らすだけで、子どもや孫に緑豊かな“なつかしい未来”が約束されるのです。

メニューへ戻る