6.埼玉は東京のゴミ焼き場
厚生省が調べた最新の、首都圏における都県外産廃移動量(ある県で発生した産廃のうち、中間処理または最終処分のために県外に運搬された量)が明らかになりました(日経1/13)。このデータをもとに、埼玉県への産廃移動の実態について分析した結果について述べます。移動量は発生した県での調査に基づいています。以下の移動量は全て年間です。
図15に、首都圏の1都6県それぞれから他県に移動する産廃量を示します。たとえば、2段目の東京都を見ると、他県に排出された産廃総量は6,549千トン(92年度)で、その内訳は埼玉に3,897千トン、神奈川に872千トン、以下千葉、中部地方、東北地方にそれぞれ638,132,131千トン移動したことが分かります。この結果からすると、東京都から他県に移動した産廃の59.5%が埼玉県に向かったことになります。これは第2位の神奈川に移動する量の約4.5倍に達します。
埼玉県ではどうなっているでしょう。当県からは、東京都に次ぐ1,547千トンが移動し、その43.6%にあたる675千トンが東北地方に移動しています。すでに指摘されていることですが、当県は全国でも最大規模の産廃の中間処理地帯となっています。中間処理とは言うまでもなく焼却処理のことです。
埼玉はまさに産廃焼却産業のメッカともいえます。その産廃焼却産業の“最終製品”である焼却灰が、東北地方(福島県等)の最終処分場に捨てられているというわけです。埼玉は東京のゴミ焼き場であり、東北地方がその灰捨て場なのです。
次に、各自治体に首都圏から移動する産廃量を求めます。その結果を図16に示します。この図から、第1位は埼玉県の4,769千トン、第2位は神奈川県1,295、以下、東北地方959、千葉県888、中部地方487(千トン)等、という結果が得られます。第2位の神奈川に比較して、埼玉県への流入量は3.7倍にもなっていることが分かります。従来は埼玉県の調査結果として277万トンという値が使われてきましたが、今回はこの値を約200万トンも上回る結果となりました。
次に埼玉県に流入する4,769千トンの内訳をみると、前述したように東京都からの流入量が3,897千トンですから、実にその81.7%が東京都起源ということになります。言い換えれば、東京都からの流入を止めるだけで、ほぼ千葉県並み(872千トン)に減少するということです。
次に、埼王県以外の1都5県から他県に移動する産廃の総量を図15から求めると、9,332千トンという値が得られます。先ほど求めたように、埼玉には4,769千トンの産廃が流入したので、1都5県から移動する産廃の51.1%が当県に流入したことがわかります。
以上の結果から、埼玉は東京という世界最大の大量廃棄社会のゴミ焼き場であるばかりでなく、首都圏全城から移動する産廃のゴミ焼き場であると言えるでしょう。
なぜこのようなことが起きているのでしょう?その最大の理由は、当県が産廃の持ち込みを無制限に認めている数少ない県だからです(図17)。産廃焼却という中間処理産業にとって、交通至便、持ち込み自由の別天地が我が埼玉県なのです。
当県が今後とも産廃の持ち込みに関する車前協議制を導入せず、産廃を無制限に受け入れるならば、この“東京のゴミ焼き場”状態は今後とも変わらないでしょう。変わらないどころか、行き場の無くなった産廃は、ますます当県に集中するはずです。このように埼玉のダイオキシン問題は、起こるべくして起こった、産廃焼却産業に起因した大規模な産業公害と言えます。埼玉県は、一般環境調査によってお茶を濁すのではなく、発生源を特定する調査に切り替えるべきです。
県のダイオキシン削減対策検討委員会の答申に見られる産廃団地や一般廃葉物との混合焼却、さらには固形燃料化によるゴミ発電などの“解決案”は、”ゴミ焼き場さいたま”という現状に対してなんの根本的な解決にもつながりません。それところか、受け入れ体制の整備拡充は、さらなる“ゴミ焼き場”への基盤を強化することになるでしょう。
“ゴミ焼き場さいたま”から脱却するには、焼却の禁止かゴミの持ち込み禁止かのどちらかしかありません。焼却禁止が出来ないのなら(私たちはこの点についても、再三にわたり土屋知事に焼却業務の停止命令を出すことを求めてきましたが、なしのつぶてです)、首都圏からの産廃の流入を緊急に止めさせることです。この深刻な産業公害を一刻も早く終息させるには、もうそれしか解決策はないのです。
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