5.家庭焼却で赤ちゃんが死ぬ?!
ゴミ焼却で野放しになっているのは、他でもない家庭焼却です。埼玉県の全市町村における新生児死亡率ランク(89−94年)と、家庭用簡易焼却炉の購入補助実施市町村を比較した結果(図13)、恐るべき事実が明らかになりました。その要点を次にまとめます。
(1)新生児死亡率が県内の上位20位までにランクされた各市町村のうち、産廃焼却施設の密集地域を抱える地域が5、家庭用簡易焼却炉の購入補助制度によって自家焼却を推奨している(もしくはしていた)地域(以下、自家焼却推奨市町村)が11あり、自家焼却推奨市町村が約半数を占めていることが分かった。
(2)自家焼却推奨市町村で新生児死亡率ランクが高いのは、第1位:吉田町(死亡率ll.49人、対県4.65倍)、第2位:荒川村(同6.41人、同2.60倍)、第4位:川里村(5.75人、2.33倍)などである。
これらの死亡率は、産廃焼却施設が密集する三芳町(4.06人、l.64倍)、大井町(3.51人、1.42倍)、所沢市(3.44人、1.39倍)などよりはるかに高く、家庭焼却による健康被害が深刻であると考えられる。特に県内でもっとも長く(71年頃から)自家焼却を進めてきた吉田町は、産廃焼却施設が無いにもかかわらず、早期新生児死亡率(11.49人、6.49倍)と乳児死亡率(17.24人、3.84倍)も全県第l位で、極めて異常な事態となっている。
(3)神下高弘氏ら(京都大学工学研究科)の研究によると(第7回廃棄物学会研究発表会講演論文集、1996、p‐81−83)、自家焼却はダイオキシン等の有害な有機塩索化合物の重要な発生源である可能性が示唆されている。
また、市民団体「日本消費者連盟関西グルーブ」が昨年9月に調査した結果では、家庭用焼却炉から出た灰1グラム当たり最高4,933ピコグラムのダイオキシンを検出している(毎日新聞97/11/29)。
以上のことから判断すると、家庭焼却もダイオキシンの重要な発生源となっており、特に埼玉県秩父地方の吉田町、荒川村、小鹿野町などでは、長期間の家庭焼却が、乳幼児の高死亡率に大きな影響を与えている可能性が指摘されます(図14)。
昨年11月28日に、厚生省は各都道府県と政令指定都市の担当者に対し、家庭用簡易焼却炉の購入補助の中止を要請しました。また、本年4月10日にも同様の通達と、ダイオキシン削減の観点から、家庭焼却ではなく、自治体の一般廃棄物焼却炉で焼却するよう指導しました。全国の自治体におけるゴミ処理行政の変更を迫るこの指導は、私たちの要望を受け入れた画期的なものでした。しかし焼却炉を購入した家庭ぱかりでなく、都市近郊や農村地域などでは、従来からの習慣で現在も焼却を続けています。
家庭焼却の危険性については、愛媛大学の脇本先生が繰り返し指摘されています。一刻も早く全国の家庭焼却を中止させ、飛散した焼却灰を安全な方法で回収する必要があるでしょう。
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