3.産廃銀座で赤ちゃんが死ぬ?!
くぬぎ山〜所沢インター周辺の産廃焼却施設密集地域とその周辺における健康被害調査を行ったところ、この密集地域を抱える所沢市、三芳町、大井町そして入間市において、最近6年間の新生児死亡率(出生後4週間末満の新生児千人当たりの死亡数)が県平均より1.4〜1.7倍も高いことが明らかになりました。この調査結果について報告します。使用したデータは厚生省の人口動態統計です。
(1)所沢・三芳・大井地区における新生児死亡率の推移
はじめに、1970年から93年にかけての、埼玉県全体(以下、県)と、所沢市・三芳町・大井町を一つにまとめた場合(以下密集地区)の新生児死亡率(以下、死亡率)の推移を図5に示します。同図には密集地区における産廃焼却量の堆移も示してあります。県のカーブが示すように、全体的には死亡率は年々低下しており、密集地区も全般的な傾向は県とほぼ同じです。しかしよくみると、産廃焼却量が次第に増加する80年頃を境にして、それ以前は県よりもやや低い死亡率が、80年以後は明らかに県よりも高くなっています。何らかの異変が起きたとしか考えられません。
(2)所沢周辺の死亡率と焼却量の関係
次に所沢周辺における自治体の死亡率がどうなっているかを調べます。始めに密集地域における産廃焼却量の推移に注目して次の3期にわけ、各期の死亡率がどう変化したかを見ました。
第1期:焼却量がゼロか極くわずかの時期。70〜80年までの11年間。
第2期:焼却量が次第に増加する時期。81〜88年までの8年間。
第3期:焼却量が激増する時期。89〜94年までの6年間
図6は第1期の死亡率比較です。焼却量の少ないこの時期、調査した全ての自治体が県平均以下で、自治体間の差も少ないことがわかります。
次に焼却量が次第に増加する第2期の死亡率比較を図7に示します。ワースト3までを入間市、所沢市、三芳町が占めています。これらはいずれも密集地域を抱えた自治体です。
図8は第3期の比較結果です。焼却量が激増するこの時期、入間市、三芳町、大井町、所沢市がワースト4までを独占し、特に入間市と三芳町が高くなっています,
図9は、各自治体の死亡率を県の死亡率で割った対県倍率として、第l期と3期の比較ができるようにまとめたものです。この図から最近6年間は入間市の死亡率が県の1.7倍と最も高く、次いで三芳町1.64倍、大井町1.42倍、所沢市1.39倍となっていることがわかります。
以上の結果は、入間市、三芳町、大井町、所沢市で新生児死亡率が高くなった時期と産廃焼却量の増加時期に対応が見られること、および産廃焼却施設の密集地域と高死亡率の2市2町が良く一致することを示しています。その原因はともかくとして、密集地域で深刻な健康被害が発生していることが初めて明らかになったのです。
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